HiKOKI CV36DMA (XPCZ)で異色作業記


目次

レビュー概要

実際に購入して使い込んだCV36DMA (XPCZ)は、いわゆる木工の面取りや車のボディ磨きといった「王道」の使い方ではなく、あえて少し外した現場で試した方が本質が見えた。一つ目はFRPカヤックのゲルコート補修。連続した曲面が続く胴体で、36Vマルチボルトのパワーと4.0°振動角の当たり方が均一か、低速域でのコントロールが効くかをじっくり確認した。二つ目は舞台装置のアルミトラス端面処理。作業空間が狭く、姿勢が不安定になりがちな場面で、握り替えのしやすさやトリガーの微妙な操作性、グリップの太さが邪魔にならないかをチェック。三つ目はコンクリート立ち上がりの化粧面の段差をなだらかに均す作業。粉が舞いやすい素材で、回転(振動数)を落として当てる時間を稼ぎつつ、振れの収まりと接地感を追った。

どの現場でも共通して感じたのは、立ち上がりが穏やかで、狙ったスピード帯に乗せたまま細部のライン取りができること。無負荷振動数6,000~20,000min-1のレンジをダイヤルで細かく刻めるおかげで、素材に合わせた「ちょうどいいところ」に合わせやすい。回し続けても手が痺れにくく、長めの作業でも集中が切れない。パッドやブレードを替えて木材・金属・石材を跨いでも挙動が破綻せず、道具側に合わせるのではなく、こちらの手の癖をそのまま乗せていける感覚がある。派手さはないが、実務のリズムにしっかり馴染む、落ち着いた仕事道具という印象だ。

使い込んで見えたこと(使用感レビュー)

購入してからおよそ三週間ほど、ほぼ毎日のように何かしらの素材に当ててきた。最初に手に取った瞬間に感じたのは、見た目以上にずっしりとした安定感があること。バッテリー装着時で実測約2.0kgクラスのマシンなので、軽快というより「どっしり構える」タイプだが、不思議と取り回しは軽快で、握った手にしっかり収まる感覚が心地よい。逆に最初に気になった悪い点は、長時間握っていると手首に少し負担がかかること。これは持ち方と支点の位置に慣れてくるとかなり改善するが、最初の印象としては「少し重いな」という感覚は残った。

日常でまず役立ったのは、木材の棚板を自作したとき。丸ノコで切断したままだとどうしても残る細かな段差やざらつきを、このマルチツールで一気に撫でるだけで仕上がりが変わる。サンドペーパーを貼ったパッドで木口を軽くなでると、手触りが明らかにしっとりしてきて、「素手で触っても安心な家具の縁」になる。手作業のペーパー掛けだと飽きてしまう工程が、機械任せでサクサク進むので、単純に楽しい。

金属パイプの端部処理でも活躍した。火花が散る瞬間の迫力はあるが、細径グリップとブラシレスモーターの安定した振動のおかげで、恐怖感よりも「任せられる」という安心感が勝つ。パイプのバリを取って面取りする工程が、以前よりもずっと短時間で終わり、その後の塗装や組み立てにすぐ移れるようになった。

購入前は「36Vクラスの工具だから音が大きくて近所迷惑になるのでは」と心配していたが、実際に使ってみると予想よりも静かで拍子抜けした。もちろん無音ではないものの、耳障りな高音が抑えられており、防振構造と相まって「音より振動が先に気になる」レベル。夜間の屋外作業はさすがに控えるが、昼間なら住宅街でも気兼ねなく使える印象だ。逆にギャップとして感じたのは、思った以上にパワーが強く、軽く当てるだけで素材が削れていくこと。最初の数日は力加減を誤って削りすぎてしまい、「あ、やりすぎた」と慌てて手を止めることもあった。

操作性については、トリガーとロックボタン、振動数ダイヤルの位置関係がよく考えられていて、指を伸ばすだけでオンオフや速度調整ができるのが便利。細かい姿勢を変えながら作業しても、持ち替えがスムーズで違和感がない。樹脂部分も安っぽさがなく、36Vクラスの道具らしい堅牢さがあり、「現場に持ち出して多少雑に扱っても耐えてくれそうだな」と感じる質感だ。グリップ表面は滑りにくく、汗をかいても保持力が落ちないので、夏場の屋外作業でも安心できる。

具体的なシーンとして印象に残っているのは、古い自転車フレームの再塗装に向けて錆を落としたとき。細かい部分にスターロックマックスのブレードを当てると、錆が面白いほど剥がれ落ちていき、地金が顔を出す瞬間はちょっとした快感だった。作業後に指でなぞるとざらつきが消え、塗装の下地として「これなら任せられる」と思える状態に持っていけた。

庭の石材加工でも威力を発揮した。敷石の表面を軽く削って平らにするだけで、置いたときの安定感が増し、見た目もきれいに揃う。振動数を抑えた状態でじわじわ当てると、石の表情を残しつつ段差だけを削れるので、やりすぎにくい。音や振動に気を取られず、ひたすら素材の状態に集中できるのは、このクラスのマルチツールならではのメリットだと感じた。

使い始めてから二週間目くらいに、木材と金属を交互に処理する長時間作業をまとめて行ったことがある。さすがに腕のほうは途中で休憩が必要になったが、モーターの熱は思ったほど上がらず、出力が目に見えて落ちることもなかった。バッテリーを差し替えつつ作業すれば、工具側を「休ませる」必要はほとんどないだろうと感じた。

全体を通して感じたのは、期待以上に「安心して任せられる道具」だということ。購入前はスペックやパワーばかり気にしていたが、実際に使うと、操作性や質感、静音性、安定性といった細かな部分が日常の作業に直結していることに気づかされる。重さは確かにあるが、それが逆に当てたときの安定感につながり、仕上げの精度を高めてくれる側面もある。三週間使ってみて、最初の印象から変わった部分もあるものの、全体としての満足度はかなり高い。

木材・金属・石材といった異なる素材に触れる機会がある人にとって、この一台は「常に手の届くところに置いておきたい相棒」になりうる。実際に手にして作業を進めると、工具が持つ力強さと繊細さの両方を感じられ、作業そのものが少し楽しくなる。買ってから時間が経つほどに、手に馴染み、信頼感が増していくタイプの道具だ。

機能と設計の要点

このCV36DMAを手に取った理由は、従来の工具ではどうしても仕上げにムラが出てしまい、特に細かい面の均しや艶出しに時間がかかりすぎるという課題を抱えていたからだ。木材や金属の表面を一度に整えたい、研磨からポリッシュに近い仕上げまでを一台で済ませたいという欲求が強く、複数の機械を持ち替える煩わしさを解消したかった。そうした背景があって、この36Vコードレスマルチツールを選んだ。

開封した瞬間の印象は、まず重量感とバランスの取り方に目がいった。見た目以上にずっしりしているが、ハンドル周長が細めに抑えられているおかげで、握りは意外と自然。ケースから取り出し、バッテリーを挿して電源を入れるまでの流れはスムーズで、スイッチ位置やロックボタンの操作感も直感的に理解できた。初めて触る工具にありがちな「どこから触り始めればいいのか」という戸惑いが少なく、すぐ作業に入れる安心感がある。

仕様面では、直流ブラシレスモーター+36Vという組み合わせと、両側合計4.0°の振動角がこの機種の中核にある。無負荷振動数は6,000~20,000min-1と幅広く、ダイヤル1〜6で簡単に調整可能。低速域では仕上げ寄りの繊細なコントロール、高速域では鉄筋や厚めの部材を一気に切り進めるようなスピード感が得られる。この「レンジの広さ」が、カヤックのゲルコートからコンクリートのならしまで、異素材を跨いでも同じ一台でこなせる下地になっていると感じた。

本体サイズは全長359mm×高さ130mm×全幅88mmクラスで、バッテリー装着時の質量は約2.0kg。数字だけ見るとやや大きめだが、重心の置き方が良く、両手で支えたときに先端が振られにくい。狭い場所では片手+支え手の二点保持で操作することが多いが、そのときも「先端だけが暴れる」感じはほとんどなく、意図したラインに沿って動かしやすい。

また、2灯式LEDライトが先端を広く照らしてくれるのも地味に効いているポイントだ。横向きにブレードを当てたときでも刃先が見やすく、舞台装置のトラス内部やキャンピングカーの収納奥といった暗い場所でも「見えないまま削る」状況を避けやすい。照度じたいは作業灯ほどではないものの、「作業する部分の影を減らす」という意味では十分な光量だった。

ブレード交換はワンアクションで、固定用のピン不要。マグネットによる仮保持機構が優秀で、本体を下に向けたままブレードを位置決めし、レバーを倒すだけでしっかり固定される。脚立の上や、足元が悪い現場での交換時に「落としそうで怖い」というストレスが減るのは、想像以上にありがたい部分だ。

スペックが体験にどう影響したかを振り返ると、36Vの余裕ある電圧とブラシレスモーターの組み合わせは、単なる数字以上に「作業中の安心感」につながっている。長時間使ってもパワー感が落ちにくく、研磨の途中で「あと少しなのに力が足りない」という不満を感じにくい。モーターの静粛性と低振動構造は、集中力を保ちながら細かい仕上げを続けたいときの頼もしい裏方といったところだ。

簡単にまとめると、CV36DMAの主な特徴は次のようなイメージになる。

  • 36Vマルチボルト+ブラシレスモーターで、切断・研磨とも余裕のあるパワー
  • 4.0°の振動角と6,000~20,000min-1の広いレンジで、仕上げから荒削りまで一台で対応
  • 細径グリップ&防振構造により、2.0kgクラスでも思った以上に扱いやすいバランス
  • 2灯式LEDとワンタッチブレード交換で、狭所や高所でも快適に作業しやすい
  • STARLOCK MAX対応で、対応ブレードを揃えれば用途をかなり広げられる

スペック表の数字は確かに重要だが、それ以上に「どう感じるか」がこの機種の魅力を際立たせている。単なる工具ではなく、作業の質そのものを底上げしてくれる存在として、現場と日常の両方で頼れる一本だと感じた。

良かった点と気になった点

良かった点

  • 立ち上がりが穏やかで素材を傷めにくい
    トリガーを引いた瞬間にいきなり全開になるのではなく、滑らかに振動が乗っていくので、FRPや塗装面といったデリケートな素材に当てるときでも心理的なハードルが低い。特に仕上げ寄りの作業ではこの穏やかさが効いてくる。
  • 狙ったスピード帯をキープしやすい
    負荷をかけても振動数が大きく落ちにくく、ダイヤルで決めたレンジの中で粘ってくれる。曲面のライン取りや、石材やコンクリートの段差を均すときに「一定のペースで削れる」安心感がある。
  • 振動と音のバランスが良く、長時間作業でも集中しやすい
    完全に静かというわけではないが、耳障りな高音が抑えられているうえ、防振構造により手に伝わる嫌なビリビリ感が少ない。結果として、数時間単位の作業でも「うるささ」や「痺れ」に気を取られず、素材に意識を向け続けられる。
  • ブレード交換が速く、作業段取りがスムーズ
    ワンアクションのレバー操作とマグネット仮保持のおかげで、脚立上や狭いデッキの上でもブレード交換がしやすい。ブレードを変えて、木材の切断から研磨、金属の面取りへと流れ作業的に移行できるのは、段取りの面でも大きなメリットだった。
  • 36Vの余裕が仕上がりの再現性につながる
    パワーに余裕があるので、素材や季節が変わっても「いつもと同じ感覚」で作業しやすい。木材の固さや金属の厚みが多少違っても、ダイヤル位置と当て方を揃えれば、似たような仕上がりを再現しやすいのは、長期的な信頼感に直結するポイントだ。

気になった点

  • 質量はそれなりにあるので、片手作業では疲れやすい
    2.0kgクラスの本体にバッテリーを載せるため、軽量ツールと比べるとやはり腕への負担はある。特に片手で前方を支えながら高い位置を削るような姿勢では、こまめな休憩を挟んだほうが現実的だと感じた。
  • 粉じんの多い作業では後片付けが一手間
    コンクリートや石材、モルタルを相手にすると、どうしても細かい粉が舞いやすい。これはツールの問題というより用途の問題だが、CV36DMAのパワーでガンガン削ると粉じんの量も比例して増えるので、集じん機やマスクなど周辺装備をセットで考えたほうがいい。
  • エッジ処理は慣れるまで神経を使う
    コーナーや立ち上がりのエッジを触るとき、振動の安定性ゆえに「当てやすさ」はあるものの、パワーもそれなりにあるため、一瞬の角度ミスで削りすぎることがある。パッドやブレードの選び方と当て方に慣れるまでは、意識的に軽めのタッチを心がけたいところだ。
  • 本体のみ仕様では周辺の初期投資が必要
    今回使っているXPCZセットはバッテリーやブレードがひと通り揃うが、「本体のみ(NN)」仕様を選ぶと、対応バッテリー・充電器・スター ロック対応ブレード類を別途用意する必要がある。すでにマルチボルト環境がある人には問題ないが、ゼロから揃える場合は予算と構成を少し慎重に考えたい。

まとめと次の一歩

CV36DMA(XPCZ)をじっくり使い込んでみて、最初に強く残ったのは「面に当てた瞬間の安心感」だ。押し付けすぎなくても仕事が進み、肩の力を抜いたままでも仕上がりは均一で、ムラを出しにくい。長めの作業でも手の中で暴れず、熱がこもりにくい感覚が続くのも好印象だった。満足している点は、作業テンポを崩さない扱いやすさと、狙ったラインを外しにくいコントロール性。いったんペースに乗ってしまえば、あとは手の感覚に任せて淡々とこなしていける。

一方で、細かい粉が舞いやすい場面では後片付けの手間が増えること、端部のエッジ処理では当て方に気を使うこと、そして本体質量ゆえの腕への負担など、配慮が必要なポイントもある。ただ、これらは「付き合い方を覚えればコントロールできる癖」に近く、致命的な欠点とまでは感じなかった。

向いている人・現場を挙げるなら、例えば次のようなケースがイメージしやすい。

  • 店舗什器の再塗装前の下地づくりを、できるだけ均一に、かつ段取りよく進めたい現場
  • キャンピングカーやバンライフ仕様車の内装づくりで、狭いスペースの面を荒らさずに整えたい趣味人
  • モルタル造形や造作壁の質感を段階的に詰めていきたい、造作系の職人・DIYer
  • 自宅ガレージで木工・金属・石材をまたいで作業することが多く、「何でも屋」的な一本を求めている人

生活の中では、「作業跡をできるだけ残さない」ことを重視する人にしっくり来る工具だと感じる。長期的には、仕上がりの再現性が高く、作業計画が立てやすい点が効いてくる。道具に合わせるのではなく、手の感覚で微調整していけば、季節や素材が変わっても結果が大きくブレない。

買って良かったと感じる理由は、まさにそこに尽きる。派手さはないが、毎回の「想定どおり」を淡々と積み重ねられる。36Vクラスの本格的なマルチツールを探していて、現場でも趣味でも一本をフル活用したいなら、CV36DMA(XPCZ)はかなり有力な選択肢になるはずだ。

引用

HiKOKI公式サイト:CV36DMA 製品情報

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